エアドロップのシビル判定:ウォレットが紐付けられる仕組み
エアドロップは、多数のウォレットの裏にいる一人を探し出します。シビル判定でアナリストがイーサリアムのウォレットを紐付けるシグナル、クラスターの作り方、Hop・Arbitrum・LayerZeroの対応、正直なユーザーが判定されてしまう理由を解説します。

エアドロップのシビル判定とは、暗号資産プロジェクトが無料トークンを配る前に、多数のウォレットの裏にいる一人の人物を見つけ出すしくみです。アナリストは、ウォレットがどこから資金を受け取り、いつ動き、トークンがどこへ流れたかを調べます。同じパターンを持つウォレットはひとつのクラスターにまとめられ、一人の受取人として扱われるか、エアドロップの対象から外されます。
影響は小さくありません。2024年、LayerZeroは803,093件のアドレスをシビルの可能性があると判定しました。これは同社のエアドロップ対象だった約600万件のウォレットのおよそ13%にあたります。このガイドでは、シビル判定が頼りにするシグナル、実際の事例、そして一般ユーザーが網にかかったときに何が起きるかを解説します。
エアドロップにおけるシビルとは?
シビルとは、一人の人物またはグループが、多数の独立したユーザーになりすますことです。エアドロップでいえば、数十から数千のウォレットを動かして、一人のユーザーが本来もらえる量より多くのトークンを受け取ろうとする人を指します。
プロジェクトがこれを気にするのは、エアドロップが本物のコミュニティに報いるためのものだからです。ウォレットファームに流れたトークンは、そのぶん本物のユーザーに届きません。
アナリストがウォレットを紐付けるシグナル
| シグナル | アナリストが見るポイント | ウォレットが紐付く理由 |
|---|---|---|
| 共通の資金源 | 多くのウォレットが最初のコインを同じアドレスから受け取っている | 他人の新しいウォレットに資金を送る人はほとんどいない |
| スター型パターン | ひとつのハブウォレットが短時間で数十の新しいウォレットに送金している | 一人の運営者がガス代を配っているように見える |
| チェーン型 | ウォレットAがBに、BがCに、CがDに資金を送る | 同じお金をリレーのように受け渡している |
| タイミング | 複数のウォレットが数秒から数分の差で動いている | スクリプトはほぼ同じタイムスタンプを生む |
| 同一の経路 | 同じアプリを同じ順番で、似た金額で使っている | 本物のユーザーがまったく同じ動きをすることはまれ |
| 共通の出口 | トークンやコインがひとつのアドレスや取引所アカウントに集められている | お金が最終的に同じ人の手に渡っている |
| 最低限の活動 | ぎりぎりの残高、または1〜2日に詰め込まれた活動 | 条件を満たすためだけに作られ、プロダクトを使うためではない |
ひとつのシグナルだけでは何も証明できません。アナリストは複数のシグナルで同時にウォレットを採点し、浮かび上がったクラスターを確認します。
クラスターができるまでの流れ
- お金の流れをグラフにする。 ウォレットはそれぞれ点になり、送金は2つの点を結ぶ線になります。
- 密集したグループを見つける。 コミュニティ検出アルゴリズムが、ネットワークのほかの部分よりも互いに強くつながったウォレットのグループを探します。
- グループ内の行動を確認する。 タイミング、アプリ、金額が一致するほど疑いは強まります。
- フィルターをかける。 残高がごく少ないウォレットや、短い期間にしか活動していないウォレットは減点されます。
- 結果を決める。 クラスターは除外されるか、一人の受取人にまとめられます。
Arbitrumのエアドロップ資料には、まさにこの最後のステップが書かれています。ウォレット数が多く接続度の高いサブグラフはシビルクラスターの可能性が高いとみなされ、一人の受取人にまとめられたとArbitrum Foundationは説明しています。
シビルを追ったエアドロップ3例
Hop Protocol:報奨金モデル
2022年、Hop Protocolは小さなウォレットに資金を送っていた元のウォレットを追跡し、1万件を超えるアドレスを除外しました。さらに、判定されたトークンの一部をコミュニティの「シビルハンター」に支払ったとDecryptは報じています。その後Hopはクラスターを公開しました。後のエアドロップでもそれが使われたため、一度判定されたウォレットはラベルを持ち続けることになりました。
Arbitrum:クラスターをひとつにまとめる
Arbitrumは、独自のクラスタリングと、Hopのものを含む既知のシビルリストを組み合わせました。判定されたウォレットをすべてそのまま排除するのではなく、密集したクラスターをひとつの請求枠にまとめました。
LayerZero:自己申告か、見つかるか
LayerZeroは2024年に新しい方法を試しました。ウォレットの所有者は14日以内にシビルだと自己申告すれば、予定されていた割り当ての15%を受け取れるというものです。10万件を超えるアドレスが申告しました。ほかのシビルを見つけた報奨金ハンターは分け前を得たとThe Defiantは報じています。最終リストには803,093件のシビルの可能性があるアドレスが載りました。
ラベルがひとつのエアドロップを超えて広がる理由
シビルリストが非公開のままになることはめったにありません。公開されると、分析データベースやほかのプロジェクト、ウォレット評価ツールに取り込まれます。あるエアドロップでラベルを付けられたウォレットは、次のエアドロップにもそのラベルを持ち込むことがあり、何年も後になることもあります。同じデータベースは、どのウォレットが取引所やブリッジ、ミキサーとやり取りしたかも記録し、各アドレスに情報を積み重ねていきます。
だからこそ、エアドロップを狙ったことがなくても、ウォレットの履歴は重要です。ラベルは意図ではなく、アドレスについて回ります。
一般ユーザーが誤ってシビル判定されることはある?
あります。判定はパターンに基づいて行われ、正直なユーザーがそのパターンに当てはまることもあります。
- 家族のウォレットが親のひとつのアドレスから資金を受け取っていると、スター型に見えます。
- 複数の個人ウォレットに同じ取引所アカウントから資金を移すと、クラスターに見えることがあります。
- アクティブなトレーダーが何千人もの人と同じ人気ルートをたどると、「同一の経路」のルールに当てはまることがあります。
LayerZero自身も、最初は200万件を超えるシビルの可能性があるアドレスを数え、その後、誤検知を減らすために基準を絞り込みました。多くのプログラムでは異議申し立てができます。必要になったときのために、各ウォレットを持っている理由を記録しておきましょう。
個人のプライバシーはシビル行為ではない
貯蓄用、支払い用、アプリ用とウォレットを分けるのは、ごく普通のプライバシー習慣です。多数のユーザーになりすまして、ひとつの報酬を何度も受け取るのとはまったく違います。エアドロップのルールが判断するのは、一人の人物が大勢を装っているかどうかです。プライベートなウォレットを公開用のウォレットと分けているだけで罰せられることはありません。
プライバシーのためにウォレットを分けていますか?それぞれを見える履歴なしで始める方法は新しいアドレスに資金を用意する方法で解説しています。イーサリアムを日常的に使うときの習慣はイーサリアムを匿名で使う方法にまとめています。
関連ガイド
よくある質問
暗号資産でいう「シビル」とは?
一人の主体が多数のウォレットを操り、多数の別々のユーザーになりすますことです。たいていは、エアドロップのトークンや投票をより多く集めるためです。
エアドロップはどうやってシビルウォレットを見つけるの?
資金源、タイミング、取引の経路、出口のアドレスを調べ、同じパターンを持つウォレットをクラスターにまとめます。
シビル判定は取り消せる?
場合によります。多くのプロジェクトには異議申し立ての手続きがあります。ただし、一度公開されたラベルは、ほかのデータベースに残ることがあります。
複数のウォレットを使うとシビル判定される?
それだけでは判定されません。問題になるのは、共通の資金源、同一の活動、共通の出口など、ウォレットが組織的なファームのように見えるときです。
シビル行為は許されている?
エアドロップの規約では通常禁止されています。判定されたウォレットは、割り当ての一部またはすべてを失います。